法律知識

[物件の主観的な瑕疵の調査] . . . 中古物件の売買にあたり、その建物に以前に縊首自殺があったことは瑕疵にあたるか?

X夫妻は、小学生の子供を2名持つ4人家族であった。
昭和63年10月、X夫妻は、家族の居住目的でYからY所有の中古マンションを代金3200万円で購入する売買締結をし、手付金500万円を支払った。 売買契約の条件は、残金2700万円を平成元年1月31日に建物の引渡と引き替えに、支払うこととし、契約解除による違約金の定めを売買代金の20%とした。 なお、この他売買契約にあたっては、宅建業者Zが、XY双方の仲介者として委託を受け処理していたものであった。
ところが、XY間の契約締結後の昭和63年11月頃、Xが親戚に本件売買の話をしたところ、親戚は当該マンションの一室で過去に縊首自殺があったことを告げ、その場所がどの部屋であるかを調査し、その現場が本件売買物件であることを確認してくれた。それを知ってX夫妻は愕然とし、直ちに仲介者Zに連絡を取り、縊首自殺の事実の確認を求め、かつ、売買契約の解消を求めた。 その結果、次のような縊首自殺の事実が判明した。
昭和57年9月頃、亭主Yは、当時の妻や子2人と一緒に、本件マンションに入居したが、同年10月14日妻が、心労などからベランダで縊首自殺をしたものであった。その後、Yは、昭和59年5月再婚し、子2人と共に、本件マンションでの生活を継続し、昭和63年1月一戸建てに転居し、現在は、Yの事務所として使用していた。
その間Yは昭和62年頃、本件マンションの処分を検討したが、買い手が付かず昭和63年9月になり、本件仲介業者Zとの間で媒介契約を締結し、その仲介により本件売買契約の成立となったものである。 しかし、Yは仲介業者に対し、妻が縊首自殺した事実を告げてはいなかった。それはZから聞かれなかったからであると述べている。
そこで、仲介業者Zは、Yに対し、代金の減額や契約の解消を交渉したが、Yは、それらを拒否し、Xが手付放棄により解除するならば応じてもよい旨を主張するのみであった。 X夫妻は、Zに責任を強く求めると共に弁護士に依頼し、Yとの交渉を試みたが、YはYの依頼した弁護士を介し交渉を拒否し、手付け放棄を求めるだけであった。 そのため、X夫妻は、Yに対し、縊首自殺の事実は本件売買目的物の瑕疵にあたるとして、瑕疵担保責任に基づき、本件売買契約を解除し、交付済み手付金の返還を求め、かつ、損害賠償請求として契約条項にあった、売買代金の20%にあたる損害金の支払いを求める訴えを提起した。
それに対し、Yは、縊首自殺の事実は6年以上も前のことであり、売主として告げる義務もなく、また、この事実は、隠れた瑕疵に該当しないと主張して争い、逆にX夫妻に対し、現代金の支払を求める反訴を提起した。
判決の要旨(横浜地裁平成元年9月7日判決)Xの請求認容、Yの反訴棄却。