法律知識

[駐車場専用使用権の法的性質] . . . マンションの分譲に際し分譲主側に留保された駐車場専用使用権の法的性質について

Aは、本件マンションの敷地である本件土地の所有者であったが、昭和46年頃、本件マンションを建築し分譲する計画を持ち、B信託銀行に分譲委託を行った。
Aは、このマンションの計画に当たり、マンション内にステーキハウスを営業したいので、その為の駐車場を留保したい事と、分譲価格を坪当たり45万円くらいにしたい旨の希望を出した。
B信託銀行の担当者は、Aの希望に対し、借入金の金利等の計算をすると、分譲価格は少々安くしても早く売った方がよいので、坪当たり38万円くらいにし、その代わりに駐車場の専用使用権を施主に留保し、これにより収益を得るようにした方がよいとアドバイスした。 その結果、本件分譲マンションは、昭和47年頃、Aに本件マンション1階店舗と2階事務所並びに本件1階駐車場部分の専用使用権を留保する方法で分譲が行われた。
なお当時、本件駐車場部分の評価を1000万円と見て、その利益を分譲主に留保させるなど総合的に考慮し、本件マンションの分譲価格坪当たり36万5000円と決定した。 本件マンションの分譲に当たっては、パンフレットに施主として、Aが記載され、設備概要の主要設備欄には、「駐車場(賃貸、施主経営)」と記載し、「お支払い方法とローン」の欄にも「駐車場(収容能力20台)は賃貸、施主経営」との記載がされていた。
また不動産売買契約書では、本件駐車場は共用部分に属するものとされ、本件駐車場を使用細則にしたがい、売主Aに専用しようさせることを承諾する旨の規定がある。更に同契約書には、本件駐車場の専用使用権を区分所有者以外の第3者に管理規約、使用細則を尊主の上貸与することができる旨の規定もあった。 そして、管理規約の中で「区分所有者は、共有の土地の内駐車場を(使用上のご注意)の定めるところに従い、専用使用権者「施主A」に専用使用させる物とする」とし、「右の専用使用権は、この建物の区分所有者以外の第三者に管理規約、使用細則を尊主の上貸与することができる」と規定していた。 但し、この専用使用権の存続期間について、定めはされていなかった。
分譲に当たったB信託銀行の担当者の、買主に対し、本件駐車場の専用使用権が施主Aに留保されることの説明を行い、また本件マンションを買主に引き渡す際にも、その条項の説明を行った。 その為か、分譲直後からしばらくの間は、本件専用使用権が施主Aに留保されていることについて、本件マンションの居住者から意義や疑問がでなかった。本件駐車場は、本件マンションの1階部分の一部になり、その面積は、敷地全体の40%(369.50m2)にあたる。
駐車場の構造は、本件マンションの建物の外壁を利用して周囲を囲んでおり、出入り口は、西側に2カ所、南側に1カ所あり、いずれも解放されていて、マンションの居住者や第三者自由に出入りできる状態になっている。 本件マンションの1階には、施主Aのステーキハウスの店舗と本件駐車場があるだけで、他の居住者は2階以上におり、他の居住者は本件駐車場を通らなくとも各自の階に自由に出入りできるようになっていた。
ところで施主Aは、分譲当初より本件駐車場の内、一部(35m2)を本件マンション居住者の駐車場として無償提供し、そのほか、施主Aが他に有する私有地をマンション居住者の来客用駐車場として無償提供していた。なお、本件駐車場の20台の内、5台は本件マンション居住者に賃貸され、残りは第三者に賃貸されていた。
施主Aは、昭和60年9月16日死亡し、Yらが相続人となって、これらの立場を承継し、これまでの関係が継続された。 しかし、昭和61年頃、本件マンション居住者46名であるXらは、Yらに対し、本件駐車場専用使用権は公序良俗に違反して無効であり、Xらの本件土地の持分に基づき、本件土地を明け渡すよう求めると共に、Yらが本件駐車場からあげてきた収益を不当取得であるとして返還するように求めて本訴を提起した。
第一審(神戸地裁尼崎支部平成元年12月22日)判決は、本件駐車場専用使用契約が公序良俗に反し、無効であるとして、Xらの請求を容認した。Yらは控訴した。
判決の要旨 (大阪高裁平成3年3月28日判決)原判決取り消し。Xらの請求棄却。