法律知識

[事情変更と契約の解除] . . . 土地売買契約締結後の地下の異常な上昇等の事情は契約解除事由となり得るか?

売主Xは、昭和62年2月頃、自己所有の土地付建物(以下、本物件という)を売却し、その代金で息子らと同居するための店舗兼用住宅を購入する目的で宅建業者Aの仲介により、買主Yとの間で代金約8500万円(坪当たり103万円くらい)で売買契約を締結した。 この売買契約は、Xが買換物件を探す必要性があったため、物件引渡や残代金の支払などの最終履行期限が契約締結から1年10ヶ月後(昭和62年12月25日)とされたため、当初、買主Yは、長期すぎるとして契約を断念する意向を示した。
しかし、仲介業者Aが、売主Xのための買換物件を昭和61年9月30日まで探すよう努力し、同日までにその購入契約が締結できなかった場合には、AのYに対する仲介報酬はいらないとの約束をしたためにYは、売主Xに対し手付金として100万円を交付した。
ところが、XY間の契約締結の頃から、周辺の地価が上昇傾向を示しだし、1年後には、約4倍くらいの坪当たり400万円に、その後3倍くらいの坪当たり300万円と著しく変動する動きを示したため、仲介者Aや友人から、新物件の紹介を受けていた売主Xは、本件売買代金を持ってしては、新物件を購入することは困難と考えるようになった。
そこで、昭和61年10月24日頃、Xは、仲介業者Aを介してYに対し、本件契約の解除の話(手付倍戻しや解約金お支払いの申し入れ)をしたが、Yは、直ちに拒否し、更に同年10月30日到達の書面でAに対し、履行を催告してきた。 その上で、Yは、Xに対し、最終履行期限である昭和62年12月25日に限り、残代金などの支払と引き替えに本物件を引渡、かつ、所有権移転登記手続をすることを求めて訴えを提起した。
それに対しXは、
1)本件売買契約は、Xにおいて買換ができることを特約または前提として行ったものであり、Xが買換できなかったときには、本件契約が当然失効するか、または、Xに解除権が生じるので解除する。また、少なくとも錯誤で無効である。
2)手付倍返しにより解除する。
3)また、本契約は、買換を目的にしたもので、新住宅が確保されないことは死活問題であり、一方、本件地価は、当事者が予見できないほどの暴騰を示し、本件売買代金で新住宅の購入はもはや不可能となった。
その後、双方の諸事情を考えると契約の起訴となった事情が一変したものであり、事情変更理由としてXに解除権が認められるべきであるから、本件契約を解除する、と主張した。
第一審(東京地裁八王子支部昭和62年2月3日)判決は、Xの請求を棄却した。その為、Xが控訴した。
判決の要旨(東京高裁平成元年4月20日民事10部判決)控訴棄却。